
<中原中也の水が出てくる詩(海・湖・川・雨など)を集めてみました>
海にいるのは、あれは人魚ではないのです。
〜北の海
耀く浪の美しさ。人なき海の夏の昼。
〜夏の海
お天気の日の海をみてると 女が恋しくなって来ます
〜(お天気の日の海の沖では)
海は空しく光っている
〜怠 惰
海は、お天気の日には、金や銀だ。
〜(海は、お天気の日には)
月夜の晩に、ボタンが一つ 波打際に、落ちていた。
〜月夜の浜辺
波はヒタヒタ打つでしょう、風も少しはあるでしょう。
〜湖 上
筧の水は、物語る 白髪の嫗にさも肖てる。
〜悲しき朝
渓流で冷やされたビールは、青春のように悲しかった。
〜渓 流
この水は、いずれに行くや夏の日の、
〜孟夏谿行
長門峡に、水は流れてありにけり。
〜冬の長門峡
水は さらさらと、さらさらと流れているのでありました
〜一つのメルヘン
河の水は濁って 夕陽を映して錆色をしている。
〜小 景
夜が更けると、近所の湯屋の 水汲む音がきこえます。
〜更くる夜
冬の黒い夜をこめて どしゃぶりの雨が降っていた。
〜冬の雨の夜
雨は 今宵も 昔 ながらに、昔 ながらの 唄を うたってる。
〜夜更の雨
またひとしきり 午前の雨が 菖蒲のいろの みどりいろ
〜六月の雨
雨の降るのに 肩が凝る てもまあいやみな風景よ
〜雨の降るのに
バケツは雀の声を追想し、雨は沛然と降っている。
〜雨の朝
去年の今頃梅の実を持って遊んだ弟は 去年の秋に亡くなって
〜梅雨と弟
さてもこの日に雨が降る、雨の音きけ、雨の音。
〜春の雨
雨の音のはげしきことよ 風吹けば ひとしおまさり
〜雨と風
たんたら、らららら、雨が、降る。
〜雨が降るぞえ
しとしとと雨はあとからあとから降って
〜少女と雨
いとけない顔のうえに、降りはじめの雨が、ぽたっと落ちた
〜間奏曲