(孤児の肌に唾吐きかけて)

孤児の肌(はだえ)に唾(つば)吐きかけて、
あとで泣いたるわたくしは
滅法界(めっぽうかい)の大馬鹿者で、

今、夕陽のその中を
断崖(きりぎし)に沿うて歩みゆき、
声の限りに笑わんものと

またも愚(おろ)かな願いを抱き

あとで泣くかや、わが心。

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ひとくちメモ

早大ノートでは
(そのうすいくちびると)の次にあるのが

(孤児の肌に唾吐きかけて)です。

孤児の肌(はだへ)に唾吐きかけて、

という冒頭行が、
いったい、
何を、
どんなことを、
しでかしてしまったのだろうか、と、
もう少し具体的に知りたい欲求を
起こさせますが、

人の道に外れた
なんらかの行為を犯してしまって、
その行為の後で
泣いている詩人の姿を
思い浮かべることはできるでしょうか

わたくしは、
救いのない大馬鹿者だよ

ここで、
いっそ死んでしまおうか
とでも、思ったのかどうかは
わかりませんが、
断崖の道を歩くとは
自己制裁の意味が込められていることを
感じさせなくもありません。

詩人は、しかし、
夕陽の中の
断崖を歩いて、
大きな声を出して笑ってみようとしたのです

またしても
愚かな願いを抱いて

後でまた泣くのか、
わが心よ

こうして、
詩人は
懺悔(ざんげ)の姿勢を
見せているのでしょうか。

神(の問題)に向かう
何事かが、
この詩を作っている時期に
あったのでしょうか。


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