(土を見るがいい)

土を見るがいい、
土は水を含んで黒く
のっかってる石ころだけは夜目にも白く、
風は吹き、頸(くび)に寒く
風は吹き、雨雲を呼び、
にじられた草にはつらく、

風は吹き、樹の葉をそよぎ
風は吹き、黒々と吹き
葱(ねぎ)はすっぽりと立っている
その葱を吹き、
その葱の揺れ方は赤ン坊の脛(はぎ)ににている。

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ひとくちメモ

(土を見るがいい)に登場する葱は
葱畑に生育する葱で
昭和8年当時
東京にも農家があり
農家でなくとも
民家の路地には
葱を栽培する風景が見られたはずです。

その葱の揺れ方は赤ン坊の脛(はぎ)に似てゐる。

――は、「葱坊主(ねぎぼうず)」からの連想ではなく
詩人の独創らしいのですが
葱の揺れ方が
赤ン坊の脛=赤ん坊のふくらはぎに似ているとは
絶妙です。
ステロタイプな表現への
繊細な否定が
ここにあります。

1連6行の2連の作品は
小品のうちに入るでしょうが
ピリリとひきしまった
緊張感がただよって
名品です。


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