(夏が来た)
夏が来た。
空を見てると、
旅情が動く。
僕はもう、都会なんぞに憧れはせぬ。
文化なんぞは知れたもの。
然(しか)し田舎も愛しはえせぬ、
僕が愛すは、漂泊だ!
「生活」か?
そんなものなぞあろうた思わぬ。
とんだ美事な美辞に過ぎまい。
どうせ理念もへちまもないのだ、
ただただ卑猥(ひわい)があるばかり
それとも気取りがあるばかり。
僕はもう、十分倦(あ)き倦きしている!
夏が来た。
空を見てると、
旅情が動く。
「生活」とやらが……聞いてあきれる。
(一九三六・六・三〇)
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